第四十一話「因縁」
「何となく、そろそろ戸部新左ヱ門が現れる気がする……」
学校帰り、三郎がそんなことを呟いた。それと同時に空が割れ、仰々しく戸部新左ヱ門が登場した!
三郎も戸部新左ヱ門も、山本シナから力を分け与えられた存在なので、三郎にはそういうことが分かるのである。
ともあれ、とうとうゴネンジャーと戸部新左ヱ門の初対面である。
戸部新左ヱ門は完全に悪の心に染まっていて、ゴネンジャーの顔を見るなり襲いかかってきた。
こいつは本当に正義の剣士だったのか? と疑いたくなるくらいの容赦の無さであった。 しかも、鬼のように強い。
たちまち、ボッコボコにされてしまうゴネンジャー。
このままでは負けてしまう……!!
そのとき、ひとつの影が割り込んで来た。戸部新左ヱ門の永遠のライバル、灰州井溝である!
「久しいな戸部……わたしと勝負しろ!」
そう言って灰州井溝は刀を抜いた。そこに、何時の間にか現れたユキとトモミが野次を飛ばす。
「ゴネンジャーの抹殺がシナ様のご命令なんだから、あんたは引っ込んでなさいよ! 戸部新左ヱ門、こんな奴は相手にしなくて良いわよ!」
しかし、戸部は刀を構えて灰州井溝と向き合った!
「ちょっと! 命令を聞きなさいよ!」
ユキとトモミの怒りの声も、耳に入っていない様子。にやりと笑う灰州井溝。
こうして戸部新左ヱ門VS灰州井溝、因縁の対決が始まった!
激しく切り結ぶふたりの剣豪。オーディエンスに徹するゴネンジャー。ときに
「ああっ戸部新左ヱ門が何時の間にか背後に回って、灰州井溝の渾身の一撃をかわした!」
といった解説なんかもこなしちゃうゴネンジャー。
勝負はまったくの互角に見えた。しかし、かつて何度も戦ったふたりには、決定的な違いがある。戸部新左ヱ門は、山本シナから悪の力を授かっているのだ。
そんなわけで、均衡が崩れるときがやってきた。
戸部新左ヱ門の目がビカッと光り、ビームが射出されたのである!
目からのビームに、灰州井溝は倒れる。
「剣で戦わぬとは……見損なったぞ……!」
灰州は呻くが、戸部の耳に届いているかは不明である。戸部は空腹で動けなくなってしまったのでユキとトモミが回収し、負傷した灰州はゴネンジャーが引き取ることになった。
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第四十二話「笑顔を取り戻せ(前編)」
怪我が酷くて目を覚まさない灰州井溝。彼は雷蔵の家で寝かせ、手当には、妖精が交代であたってくれることになった。
戸部マジ強いじゃん、灰州井溝でも無理なのに、あんなのとどうやって戦うんだよ……とざわざわするゴネンジャー。
そこに、食満留三郎先輩が声をかけてきた。
食満先輩は家が保育園を経営しているのだが、そこの園児たちの様子がどうもおかしいのだと言う。キナ臭いので取り敢えず保育園に向かうゴネンジャー。
食満先輩の言うとおり、園児たちはなかなか大変なことになっていた。あちこちで喧嘩が勃発し、手の空いている園児は花壇の花を引っこ抜いたり、靴箱の靴を片っ端から砂場に埋めたりと悪行三昧である。
園児たちは、保育園にやって来たゴネンジャーの姿を見つけると、手にハサミやらレンガブロックやら、割とシャレにならない武器を持って襲いかかってきた!
これはきっと邪忍衆の仕業だ、とすぐに気が付くゴネンジャー。何処かで、子どもたちを操っている敵がいるはずである。
ゴネンジャーは周辺を捜索するが、何処にも見当たらない。
その間にも、園児たちは的確に目を狙ってこようとする。おそろしい。しかもこちらは反撃するわけにはいかないので、ゴネンジャーは苦戦を強いられた。
「みんな来てくれ!!」
保育園に響き渡る、雷蔵の叫び。他の四人は、雷蔵が捜索にあたっていた「おゆうぎ室」に急行した。そこには雷蔵と、縄でぐるぐる巻きにされた食満先輩がいた。
「食満先輩……!? これは一体どういうことだ……!」
「こういうことだ!!」
そう言って背後から現れたのは食満先輩……いや、食満先輩になりすましていた邪忍衆であった!
おゆうぎ室に転がされていた食満先輩こそが本物で、ゴネンジャーに相談を持ちかけてきた食満先輩はニセモノだったのだ!!
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第四十三話「笑顔を取り戻せ(後編)」
保育園で死闘を繰り広げるゴネンジャー!
「死ねえっゴネンジャー!」
ニセの食満先輩による不意討ちを食らってしまったのは、雷蔵だった。吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる雷蔵。
「雷蔵!!」
気を失う雷蔵に、ゴネンジャーが怒りをあらわにする……前に、もう三郎が変身してニセ食満先輩に飛びかかっていた。さすがの素早さである。しかも若干バーサク状態で、ただひたすらニセ食満先輩をボコる三郎。
そのスーパーフルボッコタイムは目を覚ました雷蔵が「三郎、もう大丈夫だよ」と声をかけるまで続いたのだった……。
三郎がニセ食満先輩を倒したおかげで、保育園の魔は祓われた。
園児は元にもどったし、三郎の戦闘中、緊縛状態で放置されていた本物の食満先輩も自由の身となった。
めでたしめでたし……と言いたいところだったが、そこにユキとトモミが現れた。
「予告登板ー!」
「明日、戸部新左ヱ門があんたたちを殺しにきまーす!」
「頑張って良い感じに死んでね!」
しかしゴネンジャーは怯えない! むしろ闘志をむき出しにして、受けて立つ構えである。そして山本シナも倒し、平和を取り戻すと改めて誓うのだった。
「シナ様を倒す? 馬鹿じゃない?」
「そんなの無理だし、それに……ねえ?」
「そうそう。シナ様を倒したら……ねえ?」
ユキとトモミは顔を見合わせ、クスクスと笑う。
「シナ様が死んじゃったら、三郎先輩も死ぬのにね!」
「だって三郎先輩は、シナ様の命の一部なんだから」
シナを倒すと、三郎も死ぬ……!?
衝撃の新事実に固まるゴネンジャー。しかし明日、戸部新左ヱ門はやって来る。
どうするどうなるゴネンジャー!
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第四十四話「最強の剣士」
戸部新左ヱ門が来る、と予告された日。
雷蔵の家で寝ていたはずの、灰州井溝がいなくなっていた。
妖精タキが鏡とにらめっこしていた隙を突いて、脱走したのだと言う。
ゴネンジャーはとても嫌な予感がした。
灰州井溝……あいつ、また美味しいところで現れる気だ……。
しかし、そんなことを言っている場合ではない。
またまた空が割れ、戸部新左ヱ門が現れたのである!
ゴネンジャーは今回、ひとつの作戦を打ち立てていた。戸部新左ヱ門は腹が減ると動けなくなる。ならばとにかく相手を疲労させ、空腹を誘うのである。
そんなわけで、「逃げ」に徹するゴネンジャー。
なんといっても、彼らは若い。良い感じに戸部新左ヱ門を振り回し、足下がふらつき始めたところを狙って攻撃を仕掛ける。
「……ぐっ……!」
効いている! これはいけるんじゃないか!
そう思ったそのとき、黒い霧をまとって山本シナが現れた!
「ふふ、腹が減っては戦はできず……なんて、言うものね」
シナはそう言って、黒い霧を戸部新左ヱ門に分け与えた!
人ならぬ存在となった戸部は、シナの悪の力で空腹を満たすことが出来るのだ!
しかも、シナの悪の力は無限に湧いてくる。つまり、戸部の空腹を誘う作戦はもう通用しないのである。
八方手ふさがりのゴネンジャー。
結局ボッコボコにされてしまうゴネンジャー。
このままでは負ける……世界が終わってしまう……!
そんな風にゴネンジャーが絶望しかけたとき!
そこに現れたのは……そう、いつだって美味しいところで現れるアイツである。
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第四十五話「刀は語る」
ゴネンジャーVS戸部新左ヱ門の現場に現れたのは、案の定というかなんというか、灰州井溝であった!
「戸部新左ヱ門……今度こそ、わたしと真剣勝負をしろ。……わたしの言っている意味が、分かるな」
灰州はそう言って、刀を抜いた。ゴネンジャーの面々は、やばい灰州井溝の方が主人公っぽい……と冷や汗をかいた。
「いやあね、邪魔するなんて無粋だわ。戸部新左ヱ門、さっさとやってしまいなさい」
冷たく命令する山本シナ。戸部新左ヱ門は灰州井溝の方を向いた。そして剣を抜く。こうして、灰州井溝と戸部新左ヱ門の激しい斬り合いが始まったのだった。
「どういうこと……。戸部新左ヱ門、お前には数々の術を授けていたはず。どうして剣しか使わない!」
山本シナは叫ぶが、戸部は剣のみで灰州と戦った。ゴネンジャーは、脇の方でおとなしくしていた。
それは正に激闘、死闘であった。刃と刃がぶつかり合う度に、灰州は正義の心を持った戸部と戦っていたときのことを思い出していた。そして口には出さず、刀で戸部に語りかける。お前も思い出せ、と!
「……灰州……っ!」
シナに正気を奪われていたはずの戸部が、灰州の名前を呼ぶ。かつてのライバルとの戦いを通し、彼の心に何かが芽生えたのである。
「いけない……! 戸部新左ヱ門、悪の力を! もっと悪の力を纏いなさい!」
シナはそう言って、自らの黒い霧を戸部新左ヱ門に与えようとした。しかし、そんな彼女にゴネンジャーは五人がかりでタックルして邪魔をする!
「貴様らっ……!!」
山本シナの顔が歪む。そしてそのとき、灰州の、渾身の力と思いを込めた斬撃が、戸部の身体を覆っていた黒い波動を切り裂いた!
「……灰州井溝……? わたしは、一体何を……」
戸部新左ヱ門が、正義の心を取り戻した瞬間であった。
山本シナは悔しさをあらわにしつつ、黒い空へと消えていった。
戸部新左ヱ門は、山本シナに捕らえられていたときのことを、あまりよくは覚えていなかった。しかし、山本シナが悪であるということは分かる。そう言うわけで、戸部新左ヱ門はゴネンジャーに協力してくれることになった! そして灰州井溝も、一緒に戦ってくれる風な空気を出していた! おっとこれは勝算が見えたんじゃないか!
戸部新左ヱ門を失い、山本シナは焦っているはずである。
すなわち、最終決戦が近付いている……。
気を引き締めるゴネンジャーであった。
しかしまだ、問題は残っているのである……。
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