第四十六話「迷い」
仲間になった戸部新左ヱ門が、ゴネンジャーを特訓してくれることになった!
最強の剣豪に鍛えられ、めきめきと力をつけてゆくゴネンジャー。
とても良い流れである。あまりにスムーズに来ているので、八左ヱ門、兵助、勘右衛門の三人は、まだ問題が残っていることをすっかり忘れていた。
しかし雷蔵は忘れていなかった。忘れようがなかった。
ある日、特訓が終わってから雷蔵と三郎はふたりで水族館に出掛けた。ふたりはしばらく、黙って魚を眺めていた。
「……ユキとトモミが言っていたことを、気にしているのか」
先に口を開いたのは、三郎だった。
「シナを倒せば、その命から生まれた三郎も死ぬ」
三郎の言葉どおり、雷蔵はそれを気にしまくっていた。当然である。山本シナを倒さなくては世界に平和が訪れない。しかし、そのシナを倒せば大切な友達を失ってしまうなんて……!
「あんなの、あいつらのハッタリだよ。気にすることなんてない」
「……本当に、そうなのかな。ぼくたちは、このまま戦って良いのかな……」
「そんなの迷う必要なんかない! 山本シナは倒さないといけないんだ!」
三郎は声高に主張するが、雷蔵は答えることが出来なかった。三郎は、そんな雷蔵に声をかけようとした……が、そのとき! ユキとトモミが大勢の邪忍衆を引き連れて現れた!
すぐに変身し、戦う三郎と雷蔵。ユキとトモミは、見覚えのある貯水タンクとホースを携えていた。以前、三郎の変装を溶かした道具である!
前回は、これが原因で三郎は離脱してしまったのだ!
やばいんじゃないの! やばいんじゃ! ないの!!
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第四十七話「誓い」
「くらえー!」
三郎の顔をめがけて、水を放つユキとトモミ。雷蔵は三郎をかばおうとするが、間に合わない。水をまともに食らった三郎は、両手で顔を覆って苦しんだ。
「うっ……ぐ、あああっ……!!」
「さ、三郎……!!」
「……なーんてね」
三郎はけろっと、手を離して顔を上げた。現れたのは、先程と同じ雷蔵の顔だった。彼は雷蔵の顔の下にも、雷蔵の顔を仕込んでいたのだ。
ユキとトモミは、何度も三郎の顔に放水した。しかし、その度に雷蔵の顔が現れる。
「……お前、いったいどれだけ仕込んでいるんだ」
流石に雷蔵も呆れてしまった。三郎は「凄いだろう!」と笑っている。そんな彼を見ていたら、雷蔵も思わず笑みをこぼす。
「おれは変わった。きみのおかげだよ。きみがおれを引っ張り上げてくれたんだ。だからもしおれが危なくなったら、また、きみがその手で助けてくれよ」
三郎はそう言って、雷蔵の手を握った。それで、雷蔵の迷いは消えた。成程、ぼくが助ければ良いのか、と納得した。ぼくなら……いいや、ぼくたちならそれが出来るはずだ!
そんなわけで心を通い合わせた三郎と雷蔵は、見事ユキとトモミを撃退したのだった! やったね!
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第四十八話「星の無い夜」
卍の基地で、山本シナは静かに佇んでいた。
最終兵器である戸部新左ヱ門は、自らの手を離れた。ゴネンジャーは力をつけ、刺客を送り込んでも撃退される……ということが続いている。
「ふふ……ふふふ……」
シナは笑う。まだまだ余裕のある笑みであった。
そして彼女は、ユキとトモミを呼び寄せた。失敗続きなので叱られるのではないか、とシュンとなって現れるユキとトモミ。
「お前たちに、わたしの力を少し分けてあげるわ」
そう言ってシナがユキとトモミの頬に触れると、黒い光が彼女たちを怪しく包み……。
その頃、ゴネンジャーは相変わらず戸部新左ヱ門の元で特訓を続けていた。そこに、妖精アヤが「街でユキとトモミらしき敵が暴れている」という報告を持って来る。
ユキとトモミらしき?
それは一体どういう意味だ、と思いつつも出動するゴネンジャー。
確かに、街でユキとトモミらしき敵が暴れていた。
しかし十代前半の少女たちだった彼女らの姿は、二十代前後の素敵なお姉さんに成長し、衣装も露骨にセクシーになっていた。
「……あら、ゴネンジャーじゃない」
「あらあら、本当。遊んで欲しいのかしら?」
言い回しも、何だか艶っぽくなっている。思春期心がズキューンと刺激され、動けなくなるゴネンジャー。しかし、相手は敵である! 頑張って、どうにか変身するゴネンジャー。
だが、ユキの鎖骨が、トモミの腿チラが、ゴネンジャーたちの心をかき乱す。それも、彼女たちの術であった。完全に術に取り込まれ、戦闘不能に陥るゴネンジャー。
その中で、ひとり冷静なのは三郎であった。急に高まる三郎のゲイ疑惑……ではなく、彼は元々卍の人間なので誘惑などされないのだった。
しかし、ひとりでユキとトモミを相手に戦うのは辛い。
しかも、彼女たちは見た目だけでなく戦闘力も成長していたのだ。
こんなところで負けてしまうのかゴネンジャー!
しっかりしろ思春期!
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第四十九話「闇の乙女たち」
ユキ&トモミVS三郎の戦いは熾烈を極めた。
ゴネンジャーの他の四人は、ユキとトモミのお色気に骨抜きにされてしまって使えない。
三郎はひとりで必死に戦った。そう、仲間のために!
三郎の「友情」のリストバンドが輝く。
その光で、まず雷蔵が雷蔵が目を覚ました。
そして何処からか妖精タカが現れ、新進気鋭のキワモノアイドルユニット「伝子&はぽ子」のグラビアを残りの三人に見せ、彼らの正気を取り戻した。
さあ、これでゴネンジャーVSユキ・トモミの戦いとなった!
彼らは全力で戦った。ユキとトモミのヘソチラ、見えそうで見えない裾ヒラリにもめげず、歯を食いしばって戦った。
そのとき、黒い空が一層黒くなった。BGMも変わる。
そう、山本シナの登場である。
「ゴネンジャーの首を待っていたのだけど……遅いわ」
そう言って、シナは大地に降り立った。ユキとトモミは焦る。
「もう、良いの。ユキ、トモミ。こっちにいらっしゃい」
「シナ様、お許しを……!」
「殺さないでぇ……!!」
怯えるふたりに、シナは微笑みかける。
「何を勘違いしているの。可愛いあなたたちを殺すはずがないでしょう。わたしと一つになりましょう。そうすれば、誰にも負けないわ」
シナの言葉に、ユキとトモミは「シナ様……!!」と幸せそうに目を輝かせた。そして三人はビカーッと合体し、最強のラスボスに変化したのだった!
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第五十話「ほんとうの最後」
ユキとトモミを吸収した山本シナVSゴネンジャーの戦い!
ただでさえ強いシナは、ユキとトモミを吸収して極悪な強さになっていた。そこにくらいつく、ゴネンジャー。
傷つきながらも戦うゴネンジャー!
5分くらい使って今までの戦いを回想するゴネンジャー!
今まで出した必殺技を全部つかうゴネンジャー!
今まで関わった人全員の声援を受けて戦うゴネンジャー!
竹谷は勇気を振り絞り、常に最前線にいた!
雷蔵は仲間たちを信頼し、後ろは振り返らず前だけを見て敵に突っ込んだ!
勘右衛門は勝利を信じ、未来への希望を捨てなかった!
兵助は傷つきながらも、仲間を誠実にかばい続けた!
三郎は友情を疑わず、過去の立場を捨てて戦った!
五人が自らの特性を振り絞ったとき、彼らのリストバンドがそれぞれ輝いた!
そこに、サポート妖精のタキ、タカ、アヤ、ミキが全員現れた。
五人の心がひとつになったとき、最後の力……「結束の力」が生まれたというのだ。
そんなわけで授けられた五人の合体必殺技「ゴネンジャーファイナルアタック」を全力でシナに叩き込む!
さあ、勝負の行方は……!?
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第五十一話「勝つのは」
「ゴネンジャーファイナルアタック」を食らった山本シナ!
苦しむ山本シナ! しかしまだ彼女は倒れない!
ゴネンジャーは、ふたたび「ゴネンジャーファイナルアタック」を叩き込んだ。しかし、相手も全力である。力と力がぶつかり合い、攻撃は相殺されてしまった。
しかし、山本シナは相当消耗している。
もう一度、ゴネンジャーファイナルアタックを食らわせば、勝てる!
「もう一度だ!」
八左ヱ門は立ち上がった。……と同時に、その場に膝をついた。
消耗しているのは、山本シナだけではなかった。ゴネンジャーも、もう限界だった。
「お前たちの力はそんなものか!」
そう言って現れたのは、灰州井溝と戸部新左ヱ門だった。彼らは、自らの力をゴネンジャーにゴゴゴと分けてくれた。
そして、人々の応援! 声援! その心がゴネンジャーの力となった!
ゴネンジャーの、灰州井溝と戸部新左ヱ門の、街の人々の「結束の力」が、彼らに最後の最後の力を与えてくれたのだ。
「ゴネンジャーファイナルアターーック!!」
青く輝くゴネンジャーの拳は、山本シナの身体を貫いた!!
苦悶の声をあげ、霧散する山本シナ!
やった!!
と、思った瞬間……
「三郎!!」
三郎の足が、キラキラと輝く光の粒となって消えてゆく。
「……やっぱり、シナを倒すとおれも消えちゃうみたいだ」
そう語る三郎に、八左ヱ門は「馬鹿野郎!!」と泣きながら叫ぶ。勘右衛門と兵助も同様であった。
「三郎!」
雷蔵は、三郎の手を握った。しかし、手もキラキラと光になって消えつつあった。
「雷蔵、今まで有難う」
「嫌だ……! だって、助けるって言った……」
「ううん、もう充分だよ」
三郎は笑った。とても、すがすがしい笑顔だった。
彼は何ひとつ悔いていなかった。友情の為に生き、友情の為に死ぬことが出来るのである。彼はとても、幸せだった。
「みんな、元気でな!」
満面の笑顔で、三郎は消えてしまった。
そして、世界に平和が戻った……。
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最終話「青き戦士たち」
山本シナは消え、世界は平穏な姿を取り戻した。
その偉業を成し遂げたゴネンジャーの面々に、笑顔はなかった。
「三郎……」
八左ヱ門はため息をついた。
確かに、平和を取り戻すことが出来た。しかし彼らは、かけがえのないものを失ってしまった。
「……あれ、雷蔵。それ……」
勘右衛門は、雷蔵の手元を指さした。そこには、三郎の……ゴネンジャー・フォーゲット・ミー・ノットのリストバンドがあった。
「うん、これだけ残ってたから……」
雷蔵は言って、大事そうにリストバンドを抱きしめた。
「何処かに、三郎の墓を建てないか。あいつのことを、一生忘れないように……」
兵助の提案に、雷蔵たちはしんみりと頷いた。
「場所、何処が良いかな」
「見晴らしの良いところが良いんじゃないか」
「雷蔵、鉢屋の好きだった場所って何処?」
「三郎が好きだった場所? うーん、そうだなあ……うーん……」
「まーた迷ってる」
ん……!? となって、雷蔵たち4人は顔を上げた。今の、「まーた迷ってる」の声は、どう聞いても……
「えへ、どうもどうも」
そう言って照れくさそうに手を挙げたのは、紛れもなく、鉢屋三郎だった!
あのとき、三郎は確かに消えた。
シナに作られた命である三郎は、シナの死と共にこの世から消えたのである。
しかし三郎はゴネンジャーの一員となり、「正義の心」と「友情」という命が新たに芽生えていたのである。
だから死んではいなかった……と説明する三郎。
説明が終わると同時に、雷蔵は泣きながら三郎に抱きついた。声をあげて泣く大切友人を三郎は抱きしめ、「……ただいま」と呟く。
そこに八左ヱ門、勘右衛門、兵助がドドドっとなだれ込むようにして一斉に抱きついてきて、三郎は思いきり転倒してしまった。
「お前らなあ!」
三郎は声を荒げるが、友人たちはみな笑っていた。笑いながら、泣いていた。だから三郎も少しだけ泣いた。
これで本当に、めでたし、めでたし
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ご試聴、有難うございました!!
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