第二十一話「倒れる老人にかまうと何かが起こるお約束」

ふたりで遊びに出掛ける三郎と雷蔵。
そうしたら、道端でうずくまるおばあさんを発見した。三郎は何だか嫌な予感をおぼえ、そのまま通り過ぎようと雷蔵を促すが、心優しい雷蔵は承知しなかった。

「おばあちゃん、大丈夫ですか?」

三郎の静止を振り切り、おばあさんに声をかける雷蔵。足が痛くて動けないと言うので、雷蔵が彼女をおぶってゆくことになった。三郎はそれを見てとても嫌な感じがしたが、あまり言うと雷蔵に怒られそうだったので、渋々黙っていた。

一方雷蔵は、おばあさんをおぶって最初は軽快に歩を進めていたのだが、次第に息苦しさを覚えるようになる。更に、何やら寒気までする。

「雷蔵、やっぱりこいつ、何か変だ!」

三郎がそう言って無理矢理おばあさんを引き剥がそうとするが、凄まじい力で雷蔵に貼り付いて離れない。

実はこの老婆は、「卍」の女帝・シナの変装だったのだ!
シナの忍術的な何かによって、体力を奪われてゆく雷蔵。そこに八左ヱ門、兵助、勘右衛門も駆けつける。四人は変身するが、シナが雷蔵にぴったりくっついている為、攻撃が出来ない。

「どうしよう、このままだと、雷蔵が……!」

そのとき、シナめがけて何処からともなく石が飛んで来た。素早い動作で、それを叩き落とすシナ。同時に、彼女の身体がほんの少し雷蔵から離れた!

「今だ!」

四人はここぞとばかりに、シナに攻撃を仕掛けた。大したダメージは与えられなかったが、彼女は「今日のところは見逃してあげるわ」と微笑んで去った。

石を投げたのは、雷蔵の後輩で、きり丸という少年だった。

「何か、シャベルみたいなのを持ったおにーさんが、石投げて来いって言うから。あ、バイト代はこの人らから貰えとも言ってました!」

そう言って、笑顔で手のひらを差し出すきり丸。ゴネンジャーは少年にバイト代を支払いながら、心の中で穴掘り妖精アヤに呪詛の言葉を投げかけたのだった。

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第二十二話「影が呼ぶ(前編)」

公園にて、迷子を保護したゴネンジャー。平太というその子どもは、名前を聞いても住所を聞いても泣いてばかりであった。しかし、人懐こい八左ヱ門が上手くあやし、平太と仲良くなることに成功する。

それから比較的速やかに、保護者も見つかった。上級生の、食満先輩である。食満先輩は実家が保育園で、平太はそこに通う子であるらしい。

別れ際、平太は八左ヱ門に「贈り物」をくれた。それはうつくしい鱗のような不思議な物体であった。しかしここで、不可思議なことが起こった。わいわい騒ぎながらその鱗を回して眺めていたゴネンジャーだったが、三郎が鱗に触れた瞬間、突如として激しい閃光が飛び散ったのである。

何事かと驚くゴネンジャー。しかし、それ以上は、何も起きない。三郎が触れたときのみ反応する鱗。不審ではあったが、とりあえずゴネンジャーは解散する。

……実は三郎は、鱗に触れたとき、自分にしか聞こえない声を受け取っていた。

「帰ってらっしゃい わたしの かわいい こども」

それが誰の声かは分からないが、不吉な気配を感じ、仲間たちに打ち明けることが出来ない三郎。そして彼はその晩、夢を見る。

三郎の夢に現われたのは、ユキとトモミである。彼女らは三郎に、驚愕の事実を告げる。

三郎は元は「卍」の人間で、雷蔵を殺して成り代わるために派遣された
、シナの部下だと言うのである。
しかし途中で灰州井溝の邪魔が入り、そのときに記憶を失ったのだと。

「三郎先輩、どうして自分が不破雷蔵と同じ姿かたちをしているのか、疑問に思わなかったんですか?」

「その顔、シナ様が作ってくれたんですよ」

くすくす笑う少女たちの言葉を、ひとつとして受け入れられない三郎。そして、鱗に触れたときに聞こえた声を思い出す。「帰ってらっしゃい」……あの声は、シナの声だったのだ。

目が覚めてからも、三郎は自分の過去、記憶への恐怖が消えなかった。自分は一体、何者なのだろう……。

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第二十三話「影が呼ぶ(後編)」

翌日、ゴネンジャーは何時ものごとく敵襲を受ける。そして何時ものように変身する彼らだったが、三郎だけが変身出来ない。昨日のあれこれで己の正義の心に疑問を持ってしまった為、変身出来なくなってしまったのだ!

ショックのあまり、その場から逃げ出してしまう三郎。追う雷蔵。残された三人は、ヒイヒイ言いながら敵と対峙することになる。

三郎に追いついた雷蔵は、一体どうしたのかと問い詰める。最初は口が重かった三郎だが、雷蔵に隠し事をすることは出来ず、ユキとトモミの話をすべて打ち明ける。そして、自分はもうゴネンジャーを名乗る資格など無いのだと。

「……もしかしたら、三郎は卍の人間かもしれない。だけど今は、ぼくらの仲間だよ!」

持ち前の度量の広さで、三郎を受け入れる雷蔵。その瞬間、三郎のリストバンド(変身アイテム)がまばゆく光り出した。三郎が、一度は失われかけた正義の心を取り戻したのである!

無事に変身出来た三郎は雷蔵と共に仲間の元へ戻り、合体必殺技で敵を撃破する。

勝利に喜ぶ皆の後ろでこっそりと、三郎は雷蔵に「今日のことはまだ、あいつらには言わないで」と頼む。いずれは話さなければならないときがくる。しかし今は仲間たちと、勝利の余韻に浸っていたかったのである。

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第二十四話「消えた刀(前編)」

勘右衛門の「都内レトロ巡り」に付き合わされる兵助。ツアーの締めくくりに、勘右衛門行きつけの銭湯にゆくことになる。すると、浴場には先客がいた。灰州井溝である。湯船に浸かる灰州に驚く兵助だが、勘右衛門は平然としていた。何でも、たまにこの銭湯で会うらしい。神出鬼没なはずの灰州が一気に身近になった気がしたが、とりあえず風呂に入ることにした。

ほぼ同時に風呂から上がる灰州と勘右衛門ら。服を着て、さあフルーツ牛乳でも飲もうかとはしゃぐ勘右衛門と兵助のそばで、灰州が思いもよらぬことを口にした。

「刀が……ない……!」

なんと、脱衣場に置いておいた、彼の愛刀が消えているというのだ。
そういえば銃刀法違反……とかそんな野暮なことを言ってはいけない。刀は剣士の命なのだから。

成り行きで、灰州の刀を一緒に探すことになった勘右衛門と兵助。その際、灰州が刀と自分、そして戸部新左ヱ門とのメモリアルを語ってくれた。

戸部と灰州は若い頃からライバル同士であった。戸部は義のため、灰州は己を磨くために戦った。

灰州はかつて、戸部と剣を交えた日々を思い返した。特に忘れられないのが、十六年前の最後の戦いであった。

十六年前。灰州と戸部は荒野で決闘をおこなった。雨の中、両者は一歩も譲らぬ死闘を繰り広げた。お互いに深手を負いつつも剣から手を離さず、最後はほぼ相打ちのような形での終幕であった。ぬかるみに倒れ込むふたり。灰州は立てなかった。しかし……戸部は立った。

そしてその直後、シナが荒野に降り立った。そして、灰州との決闘で全ての力を出し尽くした戸部を連れ去ったのである。

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第二十五話「消えた刀(後編)」

灰州の回想に、ゴクリとなる勘右衛門と兵助。そんな中、雷蔵から電話がかかってきた。

「何か、ものすっごい切れ味の良い刀を持ったドクタケ邪忍衆が暴れてるんだ! すぐに来て!」

切れ味の良い刀……もしや……ということで、教えられた現場に急行する勘右衛門と兵助、そして灰州。

現場の野球場で、ひとりのドクタケ邪忍が刀を振り回して暴れていた。その刀はベンチや照明などもスパスパ切断するという、恐るべき刀であった。

「あの刀は、まさしくわたしの……!」

やっぱりね!! ということで、変身するゴネンジャー。ゴネンジャーは果敢に戦う(刀を持たない灰州は脇で見学)が、灰州の刀の強さは圧倒的で、まるで歯が立たない。どうしよう……と思ったところで、灰州がすたすたと戦闘のど真ん中に歩み寄ってきた。

「おい、危ない!!」

八左ヱ門の静止も聞かず、灰州は敵の目の前に立つ。灰州めがけて振り下ろされる刀。しかし不思議なことに、刀は灰州の寸前で止まっていた。ドクタケ邪忍がどれだけ力を込めても、それ以上は振り下ろせないらしい。

「この刀は、持ち主を分かっている。わたしを切ることは出来ない」

だからどうしてこいつはいちいち格好いいのだろう、と若干うんざりするゴネンジャーであったが、とかくスキは出来た。灰州を切ることが出来ず四苦八苦しているドクタケ邪忍を容赦無くボコり、戦闘に勝利した。

無事、刀を取り戻すことが出来た灰州。

そういえば……と、勘右衛門は三郎を見やる。以前、脇目もふらずに灰州に襲いかかった三郎である。しかし三郎は、灰州に向かってゆくどころか、雷蔵のうしろに隠れるようにして目も合わせない。

「ああ、そうか……。お前は、あのときのあいつか」

灰州の呟きに、三郎の肩が震える。八左ヱ門と兵助はふたりで別な話をしていて、その言葉は聞こえなかったようだった。勘右衛門には聞こえた。もしかしたら三郎と過去に刃を交えたことがあるかもしれない、と言っていた灰州。

勘右衛門は、自分の中で膨らんでゆく嫌な予感をおさえることが出来なかった……。

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