第二十六話「そういうの全部ひっくるめて青春」
立花先輩に呼び出された五人。一体何を要求されるのか、裸踊りしろとか言われたらどうしよう、とびびりまくる正義の味方。
立花先輩は五人を眺め、「よし、お前とお前だ」と、八左ヱ門と勘右衛門を順に指さした。そして、うつくしい笑みと共にこう言ったのだった。
「合コンに参加して来い」
何でも、その合コンには立花先輩と七松先輩が参加する予定だったが、急用で行けなくなってしまったらしい。それで、八左ヱ門と勘右衛門に代わりに行って来いと言うのである。
突然の命令に「!?」となるふたり。なんせ、合コンなど行ったことがない。勘右衛門に至っては、「え、合同コンパ? 合同コンパ?」と、昭和丸出しである。
それでもなんだかんだ、女子と出会えるのは嬉しいのでめいっぱいのおめかしをして合コンに出掛けるふたり。四対四のコンパで、女子たちはみな美少女で粒ぞろい、だったのだが……
「ユキでーっす」
「トモミです〜」
なんと、「卍」のユキとトモミがしれっと参加していたのである。あまりのことに、言葉を失う八左ヱ門と勘右衛門。ユキとトモミは八左ヱ門たちに気が付くと、
「何であんたたちがいるのよ! 立花先輩が来るって聞いてたのに!」
一気に緊張が走る合コン会場。(カラオケボックス)
あわや交戦かというところで、ユキとトモミの入れたパフュー○の楽曲が流れ出し、彼女らは戦闘よりもマイクを優先し、歌い出した。
それが思いの外上手かったため、なんとなく八左ヱ門と勘右衛門も楽しくなってきて「のっちー!」「あーちゃーん!」とかなんとか合いの手を入れたりしてたら盛り上がってなんやかんや楽しくその日が終了してしまったのだった。
盛り上がりはしたけれど、八左ヱ門と勘右衛門が女子と良い感じになったわけではなかった。彼女など出来る気配すらない。人生とは、そんなものである。
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第二十七話「今日のあなたの運勢は」
街で評判の占い師がいるという。ゴネンジャーの面々は物見遊山でその占い師に会いにゆくことにした。
噂の占い師は、山村リリィという名の老婆であった。
「お前さんは、動物が好きで、今も体育館の裏でこっそりと犬を育てているね?」
「お前さんは豆腐が好きなんだね。でも、ほかの食品もバランス良く取らないといけないよ」
「今日買うおやつをポッキーかメンズポッキーか悩むくらいなら、両方買ってしまいなさい」
「昭和はとっくに終わったんだよ。部屋に溜め込んでいる大量のファミコンソフト、遊ばないなら処分してしまいな」
次々とゴネンジャーのことを言い当てるリリィに驚く彼ら。そして最後は三郎の番だが、彼は何故か見てもらうことを嫌がった。そんな彼を見て、リリィが呟く。
「お前さんは、水に注意しなさい。水難の相が出ているから」
占いの館を出てからも、彼らの話題は山村リリィの占いのことで持ちきりであった。そこに、ユキとトモミが現われる。
「覚悟なさい、ゴネンジャー!」
彼女らは巨大な貯水タンクと共に現われた。ホースで水を撒き散らす少女たちに、ゴネンジャーの面々はリリィの言葉を思い出す。水難の相、である。しかし何故、三郎にだけ水難の相が出ているという占いが出たのだろう……そう思うと同時に、三郎がユキとトモミに捕まってしまった。
「この水、実は特殊な成分が含まれてるんですよ、先輩」
「そろそろ、その顔も窮屈でしょう? 洗い流してあげますよ」
小声で囁くユキ&トモミに、ぞっとなる三郎。自分の本当の顔になど、興味はなかったし、雷蔵の顔がはがれてしまうことに、この上ない恐怖を覚えた。
「嫌だ……やめろ!!」
暴れる三郎を邪忍衆が押さえつける。仲間たちの助けも間に合わず、ホースから三郎の顔に水が浴びせられる。苦悶の悲鳴をあげる三郎。そして彼はそのまま、顔を覆って走り去ってしまったのだった。
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第二十八話「真実の二歩手前」
あれから、三郎は帰って来なかった。翌日になっても、学校にも現われない。八左ヱ門たちは必死で彼を捜したが見つからないし、携帯に電話してもまったく出ない。
「三郎、何処に行っちまったんだ……!」
心配と不安で消耗してゆくゴネンジャー。特に、一番三郎の近くにいた雷蔵の焦燥は端から見ても痛々しいものがあった。
そんな中、勘右衛門はどうしても雷蔵とふたりで話したいことがあり、彼を学校の屋上に呼び出した。かねてより不審に思っていたことを、ぶつける機会が訪れたのである。
「もしかして、三郎は卍の関係者なんじゃないか……?」
その言葉に、動揺をあらわにする雷蔵。勘右衛門は、自分の疑念が間違いでなかったことを確信し、苦い気持ちになる。
「だけど、三郎は、本当に何も覚えていないんだよ……! それに、今はぼくたちの仲間だって言ってくれている!」
必死でフォローする雷蔵。勘右衛門は複雑であった。勿論、彼にとっても三郎は大事な仲間である。彼のことは信じたい。しかし勘右衛門は他の仲間たちよりも、戦いに身を投じていた時間が長い。卍の恐ろしさを一番よく知っている。
「……だけどきっと、シナは、どんな手を使ってでも三郎を取り戻そうとすると思うよ……」
そうなったときに、三郎や雷蔵をはじめ、皆がどうやっても傷付くであろうことを思うと、勘右衛門は辛かった。
「三郎を切り捨てるなら、今だ」
勘右衛門自身、そんなことは言いたくなかった。しかし、後々のことを考えたら、そう提案せざるを得なかった。しかし、雷蔵ははっきりと言った。
「いいや、三郎は仲間だ」
「……そうか……そうだな……!」
雷蔵のひとことで、勘右衛門も吹っ切れた。彼も、三郎の素性やシナの恐ろしさよりも、三郎との友情を選ぶことに決めたのだった。
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第二十九話「真実まであと一歩」
三郎が失踪してから一週間。八左ヱ門、雷蔵、兵助、勘右衛門の四人は三郎の帰りを待ちながら、必死で悪と戦い続けていた。
そんな中、八左ヱ門たちの街の電気が一斉に消えてしまい、一切つかなくなるという事件が起きた。卍の幹部、斜堂影麿の仕業であった。
斜堂は邪忍衆の中でも、暗闇を操ることに長けた敵である。斜堂の作り出した巨大な闇に、雷蔵が吸い込まれてしまう。
出口の無い闇の中を彷徨う雷蔵。不安と焦燥で押しつぶされそうになったとき、背後から声が聞こえて来た。
「……雷蔵、雷蔵……」
それは、三郎の声だった。雷蔵は喜び、どうして帰って来ないんだ、と三郎を問い詰める。三郎は、とにかく出口まで案内する、と言う。
三郎に手を取られ、暗闇の中を歩く雷蔵。姿は見えないが、触れ合う手のぬくもりは確かに三郎のものであった。
歩きながら、ふたりはぽつぽつと話をする。雷蔵は改めて、どうして帰って来ないのかと三郎に問う。
「顔を……見られたくないんだ。今は真っ暗だから、きみの前にも出てこられた」
「顔を見られたくない? 何故?」
「だって、今まできみたちに見せていた姿は、本当の姿ではないから」
それを聞き雷蔵は「そんなことで!」と憤慨する。
三郎がどんな顔であっても良い。とにかく帰って来て欲しい。
彼が抜けてからゴネンジャーの戦力は著しくダウンし、このままでは卍に太刀打ちできないかもしれない。
そして何よりも、三郎がいなくて雷蔵は寂しかった。それは、八左ヱ門たち他のメンバーも同じだ。彼らの間には、かけがえのない絆が生まれていたのである。
そう、雷蔵は語りかける。しかし三郎は答えない。
その内に、雷蔵は闇を抜け太陽の下に出てくることが出来た。しかしその隣に、三郎の姿は無かった。彼はまた、いずこかへと消えてしまったのだ。
しかし悲しみに暮れる暇もなく、襲いくる斜堂影麿。
ゴネンジャーは善戦するも、とどめをさす前に斜堂に逃げられてしまう。
仲間は戻らず、敵も倒せず……。
何も得られなかった空しさに、立ち尽くすゴネンジャーであった。
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第三十話「作戦会議だ! ゴネンジャー」
三郎を欠いたままのゴネンジャー。
前回戦った斜堂影麿も逃がしてしまったし、このままではいけないと、全員が焦る気持ちを抱えていた。
そこで彼らは、兵助の家に集まって作戦会議をおこなうことにした。
勘右衛門の提案により、鍋を囲みながら会議をすることとなった。日々の戦いでみんな消耗しているし、特に雷蔵は三郎がいなくなって気落ちしてしまっている。少しでも気分転換になれば……という勘右衛門の気持ちが、そこにはあった。
兵助の完璧(すぎて若干鬱陶しい)仕切りによって、出来上がってゆく豆乳鍋。4人は鍋をつつき、これからどうすべきなのかを話し合った。しかしどれだけ話しても、
「5人いなくては駄目だ」
という結論となり、彼らは更に落ち込んでしまう。
「そもそも、三郎は何でいなくなったんだ?」
三郎の過去と秘密を知らない八左ヱ門は、不思議そうに尋ねた。雷蔵と勘右衛門の間に緊張が走る。
そのとき! 鍋の出汁がぶくぶくと泡立ち、そこから勢いよく、鍋から手足が生えた造形の邪忍衆が現れた!
自宅にまで来るってちょっとセオリー無視じゃないか、と怯むゴネンジャー。此処で暴れられたら、兵助の家はどうなってしまうのか……!
すると敵はこう言った!
「さあ、表に出ろ! ゴネンジャー!」
あっそこは空気を読んでくれるんだ! と、ほんのりいとしさがこみ上げつつ、ゴネンジャーはぞろぞろと兵助の家を出て、近くの空き地に移動した。そして変身するゴネンジャー!
敵はそんなに強くない……はずなのに、ゴネンジャーは苦戦を強いられる。どうしても、身体に力が入らないのである。三郎の不在は、戦力的だけでなく精神的にも大きな影響を与えていた。
小技で敵を壁際に追いつめて、足払いで転ばせる→起きあがろうとしたところに、投げ技→起きあがろうとしたところに、投げ技→起きあがろうと(略)
……という、格ゲーのようなハメ技でどうにか勝利をおさめたゴネンジャー。
勝ちはしたが、このままではいけない……いろんな意味で……!! 彼らは、改めて自分たちのピンチを自覚したのだった。
(兵助だけは、鍋が駄目になってしまったことに本気でへこんでいた)
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