「ヨハネスブルグの旅」
ビヴァリー・ナイドゥー作 もりうちすみこ訳(小学校5.6年生向け)


帯の文句は
「こんなに差別されていたなんて、気付かなかった……」
本を開く前から、感想文に書く文言が決まりそうなアオリですが、とかくあらすじ!


アパルトヘイト下の南アフリカ。
黒人居住地に住むナレディとティロの姉弟は、病気にかかってしまった幼い妹のために、三百キロ離れた街・ヨハネスブルグで働いているお母さんに帰って来て貰おうと考え、ふたりだけでヨハネスブルグに向かいます。
ナレディとティロの姉弟は人種隔離政策が何なのかよく分かってなくて、「ずっとこういう生活をしてきたから、こういうもんだと思ってた」という感じなのですが、ヨハネスブルグで出会った人たちに、
「以前人種差別反対のデモがあり、今でも戦っている人がいる」
ということを教えてもらい、意識を変えてゆくことになるのでした。


ひとつ前に読んだ「そいつの名前はエメラルド」は前フリが長かったですが、このお話は「お母さんのいるヨハネスブルグへ行こう!」と主人公が決断するまで僅か2ページ半でした。早い!!
これはマーベラス決断力ですよ。
主人公ナレディは、全編とおして己の行動に迷いは見せない少女でした。かっこいいぜ。

あらすじにある通り、この話は主人公たちが意識を変え始めるところで終わりです。子ども向けだから、それくらいのが良いのかな。わたしは大人なので、ちょっと物足りなかったですが!
もっとその先が読みたいですね。ナレディは将来医者になりたいらしいので、彼女が医者になるまでをがっつり読みたかった。
しかしそんなのが課題図書だったら、誰も読まない! 更に小学生高学年に、そんな大作は酷!

それにしてもこの作品、テーマは良いんですが物語としてちょっとご都合主義すぎるわー。 ピンチの直後、通りすがりの良い人が現われて助けてくれる、という展開のテンドンです。全部は無理にしても、多少は自力で状況を打開して欲しかったなあ。あと、視点がクルクル変わって、たまに「?」てなるところが。 作者の伝えたいことはめちゃめちゃよく分かるんですが、主題以外の部分にも気を遣って頂きたく……。

しかし翻訳は読みやすくてナイスであった。たまに、「なんのてらいもなく直訳です!」みたいな訳の本ってありますよね……!

あとこれ、帯の文句変えた方が良いんじゃないかなー。
重いテーマがババンと前面に出てるので、子どもは構えちゃうんじゃないかなあ、と。
課題図書+重いテーマがドン=やる気メガダウン、て感じになりそうな。
じゃあどんなアオリが良いんだと問われたら、なかなか思い浮かばないんですが……! ううん、難しいな!

とりあえず、ナレディの決断力ビバ! そういう感じ!