「そいつの名前はエメラルド」
竹下文子作(小学校3,4年生向け)
わたし、この人の作品何冊か読んでると思うんですが、全然覚えてない……。あれー絶対読んでるんだけどな!
さてこちらの作品ですが、まずはあらすじを。
主人公「ぼく」こと、はるひこくんが、妹のふうちゃんへの誕生日プレゼントを買いにペットショップ(ハムスター欲しかったらしい)へ行くんですが、ペットショップは休業中。
ふとしたきっかけで見付けた不思議なペットショップにて、ハムスターではなく「エメラルドホシトカゲ」というトカゲに魅入られ、うっかりそいつをお迎えしてしまいます。
エメラルドと名付けられたそいつは、炎を食べる不思議なトカゲ。成長したエメラルドには翼が生え、やがて夜空に羽ばたいて行くのでした。
……という、すっごい典型的な不思議ショップ系児童文学です。とっても基本に忠実。
微妙な立地(他の店の隙間に埋もれるようにして建ってる)、店主がばあさん、再訪は不可、と三種の神器が揃った非常にスタンダードな作品。
文章は読みやすいし、エメラルドの描写がうつくしくて(エメラルドの身体に透き通った鱗、背中には星屑のようにきらめく小さな斑点、だなんてロマンチックじゃないか)あらあら意外と楽しかったです。
あと、どう考えても「ぼくも、エメラルドみたいなペットをかってみたいと、おもいました」って書いときゃ間違いないだろ、という感じなので感想文も書きやすいんじゃないですかね。(薄汚い!)
「エメラルドが花火を食べるシーンが、おもしろかったです」も、多分9割の小学生が書いてるな。つうか、それ以外書きようがない! わたしが小学生でも、その2点を書くわ。
なので、敢えてその辺の見どころを全部すっとばして申し上げます。 この作品の肝は、ミーシャ(店主のばあさんが飼ってる、ねこ的な生き物)の毛並みであると。
もうね、イラストがね、良くってね……。
ちょう……手をうずめたい……!
しかも背中に乗れるんだよ。空を駆けることだって出来るんだよ。
そんなん、ダントツでミーシャが金メダルですよ。ハイスペックすぎですよ。どんだけ有能なんお前。
なのでわたしが今、原稿用紙使ってガチ感想文を書くとしたら、エメラルドのことはスルーしてミーシャのことを書き連ねます。読書感想なんだから、自分の感じたことを感じたまま書いて良いはずだ!
……とかなんとか言ってますが、スタンダードな中にも「おっ、ここでその伏線回収か」とか思う場面もあったりして面白かったですよ。ふうちゃんの、小さなお姫様っぷりも可愛い。
しかしこれ、導入がすっごい長いんですよね。主人公がエメラルドを購入して連れ帰り、家族の一員になりました……ってとこまでで全体の半分いっちゃうんです。なので、子どもはダレちゃうんじゃないかなーとも思う。読まされてる、って思うと余計にね。
いやでも、これは感想書きやすいと思いますよ! おすすめ!
まーうちの職場では、あんま売れてないっすけど!
装丁が、子ども受けしないからだと思うんだよなあ……。
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