|  ※ほんの少しだけ、金城一紀ゾンビーズシリーズパロのような。
 
 不破雷蔵は郵便受けを覗き込んだ。中に溜まったチラシやダイレクトメールを、適当に手でかき出してゆく。その内に一枚の絵はがきが目に留まり、思わず「あ」と小さく声をあげた。
 
 不要なチラシ類を左手に、絵はがきを右手に持って雷蔵は部屋に戻る。まだ、誰からの便りなのかは確認しない。部屋に入ると真っ先にチラシをゴミ箱に投げ入れ、絵はがきはそっとテーブルの上に置いた。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、立ったまま一口飲んでから、テーブルの前に腰を下ろした。缶ビールを置き、手についた水滴をTシャツで拭いてから絵はがきを手にする。
 
 差出人は、鉢屋三郎。 裏面は、ピラミッドと砂漠の写真だ。
 
 前回の便りは、風車の写真だった。その前は、アンコールワット。
 
 「……ほんと、節操が無いなあ……」
 
 苦笑して、雷蔵は再度はがきの表を見た。三郎の几帳面な字が目に入る。
 
 雷蔵へ
 元気ですか。こちらはとても暑いです。
 月と星がきれいに見えます。きみに会いたいです。
 鉢屋三郎
 
 書いてあるのはそれだけだった。雷蔵はビールを飲みながら、その文面を二度、読んだ。
 
 「……きみに会いたいです」
 
 その部分だけ、声に出して読む。きみに会いたいです。確かにそう書いてある。
 
 「じゃあ、早く帰って来れば良いじゃないか……」
 
 呟いて、絵はがきから手を離す。ほんの少し角が折れたはがきはテーブルを滑り、音もなく床に落ちた。
 
 
 
 
 (アギー的コスモポリタンな三郎くん、みたいなそんな……)
 
 
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