(15分で書いたのち、誤字脱字と重複表現だけ修正しました)
(さすがに耐えられなくてですね……)

 はっと目が覚めた。今は何時だと壁に視線を向けたら、時計がいつものところに無かった。そのまま三秒ほどオフホワイトの壁を見詰め、ああそうだ此処は三郎の部屋だと気が付いた。そういえば、昨日は友人の鉢屋三郎の部屋で飲んでいたのだ。

 ぼくは欠伸をして、身体を起こした。ベッドがぎしりと軋む。ベッド。あれ、ぼくは三郎のベッドで寝たのだっけ?  ベッドから足を下ろしたら、ビールの空き缶を踏んづけた。そのすぐ側にも、ビールの空き缶が転がっている。しかも、いくつも。……ぼくは、こんなに飲んだのだろうか。それとも三郎が? もしくは、ふたりとも? ちょっと引いてしまうくらい、大量の空き缶である。

 ぼくは懸命に、昨夜のことを思い出そうとした。ふたりで飲もう、となった経緯は覚えている。八左ヱ門が失恋したのだ。……と言うと、ぼくと三郎が八左ヱ門の失恋を肴にふたりで盛り上がる陰険な奴らに見えるかもしれないけれど、違うのだ。八左ヱ門も、誘ってあったのである。五股をかけるという、いっそ清々しい悪女に捨てられてしまった、気の毒すぎる竹谷八左ヱ門を慰める回を開催する予定だったのだ。それが直前になって当の八左ヱ門が来られなくなり、だけど既に酒も買っていたし、それだったらふたりで飲もうか、と……そうそう、そんな流れだった。

 夕方くらいか始めて延々飲んで、途中からは何故か将棋を指しながら飲んで飲んで飲みまくった。そして将棋は負けまくったことは覚えている。三郎は、物凄く将棋が強かった。ぼくだって小さい頃からじいちゃんとよく将棋で遊んでいたから自信はあったのに、一度も勝てなかったのである。

 それで、そうだ。ぼくが余りに勝てないから、もう恥も外聞も捨ててハンデを要求したら彼は笑って「良いよ。その代わり、それでおれが勝ったらどうする?」と言ったのだ。だからぼくは酒の勢いもあって「それで負けたら、何でも言うことを聞いてやるよ」と答え……た、な。うん。

 ……言った。確かにぼくは言った。何でも言うことを聞くと。そうしたら、三郎は笑った。そこまでは、きっちりしっかりと覚えている。

 それで、あの、どうしてぼくは服を着ていないんだろう?




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どうでもいい余談
最初にトライしたとき、お題が「フハハハ! それは天国」で、「それは天国」はともかく「フハハハ」っておまえ……おまえ……っ となって1分で止めたんですが、ツイッター連動なので

「きりんこは、即興小説を放棄しました」

的な報告が自動でTLに流れていて、後から気付いてだいぶ恥ずかしかったです。ぼく負けたっす宣言をそんな……ご丁寧に流さなくて良いんだ……!!

そんなことも含めて面白かったです15分小説。