※現パロ女体化です
※ 久作だけ男です
※女鉢屋さんが友情出演しています
※鉢雷が百合っぽいです
■フラグゼロ■
ぼくの学校の図書委員会は、女子が四名、男子が一名で構成されている。だから図書委員会はハーレム委員会だとか能勢が羨ましいとか、周囲の男子に色々言われるけれど、あいつらは何も分かっていない。図書委員会は、そんな浮ついたところでは無いのである。
「だからさ、何度も言ってるじゃん。まず、替えの上着と眼鏡を用意するでしょ? で、このお一人様二個限定の特売サランラップを、あたしが買う。二ノ坪も買う。そんで一旦外に出て、上着を変えて眼鏡をかけて、そんで髪の毛をおろしてもう一回レジに並ぶんだよ。そうしたらホラ、特売サランラップが八個も買えちゃう!」
「……駄目だよ、そういうの……。ばれたら、怒られちゃうよ」
「ばれないよ! それに、サランラップ84円だよ? こんなの、そうそう無いよ? あとね、こっちのスーパーの醤油特売と、そっちのスーパーは合い挽き肉が安いからそれを買って、あっそれとこっちはね、17時までに入店したら粗品が貰えるんだよ。多分ボールペンとかそんなだろうけど、タダだからね、貰っとこう」
「……もう……」
図書室に入ってすぐ目に入ったのが、この下級生たちだ。閲覧用のテーブルに広げられたスーパーのチラシ類を見て、ぼくのこめかみは震えた。
「図書室でセールの相談をするなって、何度も言ってるだろ!」
「やっべ、能勢先輩だ!」
安売りとか無料配布だとかに目のない後輩は、慌ててチラシをかき集めた。彼女はいつもこうだ。何度注意しても、反省の色が見えない。ああ、腹が立つ。
「……能勢先輩、こんにちは……」
色の白い後輩が、か細く挨拶をする。そして「あっ」と小さく声をあげ、ぼくの左肩あたりにじいっと視線を注いでくる。そして、それきり口を閉じてしまう。何か、目に見えないものを見ているようで、気味が悪くなった。
「な、何だよ」
ぼくは思わず、自分の左肩を見やった。当然、そこには何も無い。青白い顔をした後輩は、そっと目をそらす。
「……いいえ……何でも無いです……」
「何だよ! 気になるだろ!」
ぼくが声を引っ繰り返すのと同時に、図書室の扉が開いて不破先輩が飛び込んできた。
「遅れてごめんなさい!」
その後ろから、「ごめんなさあい」という声がした。不破先輩と仲の良い、鉢屋先輩だ。鉢屋先輩は右手で不破先輩の手をがっちり握り、左手でピースをした。それを見て、ぼくのこめかみはふたたび痙攣する。
「不破先輩! 関係無い人を委員会に連れて来ないで下さい!」
そう言うと、不破先輩は困り顔で肩をすくめ、鉢屋先輩を指さした。
「駄目って言ってるのに、鉢屋が聞いてくれないの」
「だってわたし、不破から離れたら死んじゃうんだもの」
鉢屋先輩は目を細めて笑い、不破先輩の肩に顎を載せて彼女の腰を抱き寄せた。何だか見てはいけないものを見てしまった気になって、ぼくは思わず彼女たちから顔をそむけた。
「もー、鉢屋はそんなことばっかり言って……。中在家先輩に怒られても知らないよー?」
「ちゃんとお手伝いするから」
「鉢屋先輩、そういう問題じゃありません!」
「久作は相変わらず、融通がきかないねえ。良いじゃない。ひとりくらい増えたって、大した問題じゃないでしょうに」
鉢屋先輩は勝手なことを言って、不破先輩の手を引いてずんずん図書室の中に入って行ってしまう。不破先輩も諦めているのか、もう彼女には何も言わなかった。ぼくとしては、もうちょっと厳しく咎めて欲しい。
後輩たちは、またセールの話を始めている。鉢屋先輩は、不破先輩にくっついている。ぼくは頭を抱えた。滅茶苦茶だ。全くもって、滅茶苦茶すぎる。
そこに、ふたたび図書室の扉が開かれた。その場にいた全員の視線が、そちらを向く。
「…………」
図書委員長、中在家先輩のお出ましだった。彼女は手にした文庫本を読みながら、大股で中に入って来た。男子並に背が高いひとなので、あっという間にぼくたちの元に着いてしまう。
「……委員長! 今日もまた、あいつはスーパーのチラシを広げてるし、鉢屋先輩は乱入するし……何とか言ってやって下さい!」
ぼくは、最後の拠り所である中在家先輩に縋った。もう、彼女しか頼る人はいない。この無秩序な世界を正すことが出来るのは、図書委員長だけなのだ。
すると彼女は薄く口を開き、男子生徒からセクシーだと評判のウィスパーボイスでこう答えたのだった。
「今良いところだから、後で」
……これがハーレムだと言うのなら、ぼくは、ぼくの人生は、一体何だって言うんだ!!
5分ほどオーバーしましたが、最後まで書けて楽しかったです!
「現パロ図書委員会で、久作以外女体化で、周囲からうらやましがられるけど本人はそうでもない」……というシチュでした。
ナチュラルに鉢雷を組み込んでしまってすみません。
いやあ、どうしても、書きたくって……!
それと、二ノ坪さんは久作の左肩に霊的なものを見た……というのは久作の思い込みで、実際は「肩に糸くずがついてたけど、風で飛んでったから別に言わなくていいや」くらいのもんです。
あの中で、一番女子力が高いのは二ノ坪さんです多分。
あと、中在家先輩はキリの良いところまで読んだら、ちゃんと「静かにしなさい」って注意してくれるので大丈夫です。
30分で大勢出すと、見た目の描写が全然出来なくて……!
なので自由に想像して下さい。
(……とか書いておきながら、普段も人物の見た目描写あんまりしないよね、ってことに気が付きました)
(外見描写苦手です)
(精進します)
後書きがえらいこと長くなりましたが、リク有難うございました!
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