■my favorite things ■
雷蔵が台所に立ち、「わたしのお気に入り」を口ずさみながら料理をしている。
やわらかな声で「子猫のひげ」だとか「銅製のケトル」だとか、かわいらしいものの単語を並べ、包丁で野菜を豪快にぶつ切りにしてゆく。
三郎はリビングのソファに寝転んで雑誌を広げていたが、歌声が聞こえ始めてからは、なんとなく視線を雷蔵からそらすことが出来ない。
雷蔵は気持ちよさそうに歌う。歌声が三郎の耳を撫でる。胸があたたくなる声だ。それに選曲も良い。
この曲が使われている映画、「サウンド・オブ・ミュージック」は雷蔵のお気に入りで、三郎も一緒に何回もDVDを見た。作中で、登場人物の少年がすばらしいボーイソプラノを披露するシーンで、雷蔵は必ず「小学生の頃は、ぼくもこんな声が出たよ」と言う。当時の彼の声も聞いてみたかった。録音していないの、と訊いたら恥ずかしそうに「無いよ」と言っていたけれど、あの調子では何処かに録音したものを持っていそうだ。折を見て頼み込んでみよう。
雷蔵は皮剥きをしたじゃがいもを掴んでざくざくと適当に切り、ボウルの中に転がしてゆく。次は人参。今日はカレーだと言っていた。とても楽しみだ。
三郎は雷蔵の歌声が好きだ。何処までも耳に心地よく、幸せな気分になれる。しかも歌いながら、自分のために食事を作ってくれているなんて最高だ。
気がつけば、三郎は立ち上がっていた。歌声に誘われるように、雷蔵に近づいてゆく。
「my favorite things……って」
雷蔵が包丁を置いたところで彼の腰に抱きついたら、歌声が止まった。
「三郎、ご飯はまだまだ先だよ」
雷蔵はこちらを振り返る。やさしい笑顔にますます幸福になって、 「うん」と頷きつつ微笑んだ。
「それじゃあ、良い子にして待っておいでよ」
返事の代わりに唇を合わせてそこに軽く歯を立てたら、雷蔵は笑い声混じりに「When the dog bites……」と歌って三郎の背中に腕を回した。そのメロディと歌詞が耳から脳に回り、三郎は貪るように、もう一度雷蔵にキスをした。
はー楽しかった……
本当は、金丸淳一さんの歌をうたう雷蔵……という感じのリクだったのですが、わたしがその曲を聴いたことがなく……すみません!
で、リクを下さった方と以前ツイッターで、雷蔵が「わたしのお気に入り」を歌ったら絶対にたまらない!! という話をしましたので、そっちを歌ってもらいました。
ただ歌詞が……だいぶぼかしたんですが、問題ありそうならもうちょっと考えます。
雷蔵が三郎とイチャイチャしながら、あの声で「犬に噛まれたり」とか「蜂に刺されたり」とか歌ってたらたまらんな……と思いました。
あとボーイソプラノの雷蔵少年はぁはぁ。
欲望と妄想は尽きません!
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