■しっく■
今日は朝から図書委員会の仕事があるから、夜まで部屋に戻らないからね。
……ということは、前々から三郎に伝えてあった。彼もそれを承知した。で、雷蔵が朝目覚めて何とはなしに隣の布団を見てみたら、
「……風邪を引きました」
と、三郎が熱っぽい目で訴えかけてきたのだった。雷蔵は、布団から出て三郎の額に手を当てた。熱い。熱がある。雷蔵は、視線を軽く上に向けた。
「……えーと……」
「雷蔵ってば、酷い!」
「え、何がだよ」
三郎が急に非難の声をあげるので、雷蔵は面食らってしまった。ただ、「えーと」と言っただけで、何故そんな反応が返ってくるのだろう。
「だって今、迷ってるだろう! おれと、委員会の仕事を天秤にかけただろう!」
そこまで言って、三郎は勢いよく咳き込んだ。げえっほげっほげっほ。雷蔵は慌てて彼の背をさする。背中も熱かった。
「そんな興奮しなくても……。別に、お前と委員会を天秤にかけたりしてやしないよ」
「げほっ……、本当に?」
「本当さ。委員会は誰かに代わってもらうよ。それを、誰に頼むか迷ってたんだって」
「……じゃあ、今日は側にいてくれるの?」
期待に満ちた瞳が、こちらに向けられる。まるきり幼い子どものような仕草だった。雷蔵は、笑いそうになりながら頷いた。
「ああ」
「やった。委員会に勝った」
満足そうに頷いて、三郎は勢いよく布団をかぶり直した。何を言っているんだか、と雷蔵は呆れた気持ちになった。ため息と共に立ち上がろうとしたら、三郎がすぐに「何処に行くの」と声をかけてきた。
「八左ヱ門に委員会の交代を頼んで、それから新野先生にお薬を貰って、ついでに水を汲んでくるよ」
「…………」
「うんと急いで行ってくるから」
「……分かった」
渋々といった調子で三郎は了承する。雷蔵は今度こそ立ち上がった。それを、三郎はじっと見ている。
……今日は長い一日になりそうだ、と雷蔵は思った。三郎の熱は大したことが無さそうだけれど、身体が弱っているせいで、彼の甘えっぷりと面倒くささに拍車がかかっている。これは気合いを入れなければ。まったく、鉢屋三郎は仕方のないやつだ。
だけど、こうやって頼られるのも悪くないな、と雷蔵はこっそり微笑むのだった。
……あっまだ看病してないですね。(こんなんばっかだ、わたし!)
ええとすいません。風邪引いていつも以上に雷蔵に甘える三郎が! 書きたくて!
委員会より自分を優先してもらえる喜びに浸る三郎を書けて楽しかったです。
三郎は、雷蔵が忙しいときに限って熱を出すに違いない。
おれを構いなさい熱。
こどもか! こどもだ!
えへへほんと楽しかったです! でも看病未達成ですみません!!
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