■白くしろく■
がちん、と嫌な衝撃が頭に響いて、中在家長次は飛び起きた。今まで図書室の書庫を掃除する夢を見ていたが、一気に意識が覚醒した。何が起きた。慌てて辺りを見回す。そうしたらすぐに、同室の七松小平太の姿が目に入った。寝間着姿で、目をぱちぱちさせながらこちらを見ている。
「……今」
何かしたか、と小さな声で尋ねたら、「ああ」と堂々とした頷きが返ってきた。
「珍しくわたしの方が先に目覚めてな。嬉しくてお前の顔をのぞき込んだら、歯が白くて綺麗だったものだから、ちょーっと触ってみたいと思っただけなのだが、あっはっは、力加減を間違えたな」
小平太は豪快に言い放つ。長次は口に手を当てた。ちょっと触った、どころの衝撃では無かった。それになぜ、歯などに興味を持ったのだろう。
「だって長次はあまり口を開けないから、普段は歯が見えないだろう」
尋ねる前に、小平太は朗らかに答えた。そして腕を伸ばし、長次の口元に触れようとするので反射的に顔を背けて、やんわりその手を押し止める。
「何だ。少しくらい触らせてくれたって良いだろう」
「……普通は、友の歯に触ったりしない」
長次が首を横に振ると、破天荒な級友は楽しげに笑った。
「では、普通で無いことにしよう」
小平太は無造作に、そう言い放った。この男は自分の発言の意味を理解しているのだろうかと考えた隙に、小平太の手が長次の口をこじ開け、節くれだった指を近づけてきた。
「…………」
長次はもう、説得するのも抵抗するのも面倒になって、口を開け放って小平太の好きにさせることにした。どうせ止めたって聞きやしないのだ。それに眠い。よく見たらまだ夜明け前だった。彼がこの無意味な戯れに飽きたら、もう一度眠ろう。
小平太は長次の前歯を指でなぞり、軽くこつこつと爪先でつついた。今度はそれなりに力の加減が出来ていたので、長次も飛び上がらずに済んだ。それから急に、ぐいっと人差し指が口の中まで入ってきたので、長次は半身をのけぞらせた。しかし小平太は止まらない。長次の奥歯を無遠慮に指の腹で押さえ、歯の凹凸を確認するようにゆっくり指を滑らせた。時折、指が長次の舌や口腔を掠める。
「……お、い」
半ば無理矢理口を開かされているので、言葉が出しにくくて仕方ない。小平太はやけに真面目な面持ちで、長次の口内をまさぐっていた。
「はは……」
小平太は喉を震わせて笑った。その声がほんの少しかすれている。先ほどまでの無邪気な笑いとは全く違っていた。何やら、不穏な気配がする。
長次は小平太の腕を掴んだ。しかし相手は怯まない。むしろ更に深く、指を突っ込んでこようとする。長次の唇の端から、つう、と唾液がこぼれた。小平太は目を細める。
「いやらしい」
26分!
指定では、長次の寝起きに色気がある……という感じだったのですが、何か微妙に方向性が違う……すみません!
恋仲でも何でも無かったのに、唐突にスイッチの入るこへちょでした。
今まで六ろは、どうしてもCPっぽくないお話になるなあ〜なんて思ってたんですが……あれ、これ、普通にがっつりCPですよね……!
えへ……すごく楽しかったです。
自分の中で新しい扉が開いた感じ。
口の中に指を入れる、というシチュが好きです!
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