■潮江と立花がだらだらしてる話■
「仙蔵、ごみが溜まっているぞ」
部屋の隅に置かれた屑籠がごみで溢れかえっているのを見て、文次郎は眉を寄せた。
「溜まっているな」
床に寝転んで本を読んでいた仙蔵は、頷きを返した。しかし、頷くだけで動こうとはしなかった。
「何で他人事みたいな口調なんだ。お前が昨日、課題の報告書をまとめるのに手間取っていたから、こんなことになってんだろう」
「そうだったか」
やはり他人事のような、ぞんざいな返事であった。どうやら彼は、本を読むのを邪魔されたくないらしい。しかし文次郎は退かなかった。ひとたび目に付くと、この散らかり様が見苦しくて仕方が無い。しかし、自分のごみでもないのに、仙蔵に代わって始末してやるのは癪であった。
「今、ちょうど小松田さんがたき火をしている。持って行けよ」
部屋の外を指さして強い口調で言うが、それでも仙蔵は全く動かない。
「お前が持って行け。わたしは忙しい」
「おれには、ごろ寝しつつ本を読んでいるようにしか見えんが」
「鍛錬の一環として行って来い。好きだろう鍛錬」
「何を訳の分からんことを言ってやがる。おれはこれから、帳簿に目を通さなければならん」
「帳簿に目を通しながら行けば良い」
「お前な、そんなにごみを持って行くのが嫌か? すぐそこだぞ。お前こそ、本を読みながら行ってくれば良いじゃねえか」
そう言うと、仙蔵は読んでいた本から視線を上げ、文次郎を軽く睨みつけた。
「作法委員長が、そんな行儀の悪いことが出来るか」
真顔の仙蔵に、文次郎は呆れて溜め息をついた。
「……ごろ寝しながら読むのは、行儀悪くねえってか?」
「細かいことは気にするな。また老け込むぞ」
「また、って言うな、また、って」
ふたりがぐだぐだ言い合っていると、廊下から軽やかな鼻歌が聞こえていた。気の抜けるその声は、小松田秀作のものだった。文次郎は障子を開け、廊下に顔を出した。向こうから、小松田が歩いてくるのが見える。
「小松田さん。たき火は?」
文次郎が声をかけると、小松田は足を止めて目をぱちぱちさせた。それからにっこり笑顔になって、こう答えた。
「うん? もう消したよ」
文次郎は、仙蔵の方を見た。彼も、こちらを見ていた。
「仙蔵がさっさと行かねえから」
「文次郎がさっさと行かないから」
ふたりは、ほぼ同時に呟いた。小松田はそんな彼らを見て、何が何やら、という顔で首を傾げた。
そういうわけで、そういえばあまり書いたことがなかった六年い組のおふたりでした!
普段はビシッとしてギンッとしたふたりですが、部屋ではごろごろしたり横着したりだらだらしてても可愛いなーと思います。
熟年夫婦的な空気を醸し出して欲しいです。
はー楽しかったです。リクありがとうございました!
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